「一週間後、オーディションに来て下さい」
キャバレーニュー桃太郎のマネージャーとなんとか話を取り付け
心の中で、
「うっしゃあー」
と、
ガッツポーズを我慢しながら
興奮気味にソファー席に戻ると
若いコンパニオンのオネーサンからお酌されているマンドンさんの顔は
鼻の頭まで赤くなりゴキゲン極まりないご様子だった。
楽しそうな雰囲気の二人の間に
僕は一方的に割り込み
マンドンさんと
感激の握手をしばらく続けた。
「マンドンさんありがとうございます!」
マンドンさんはワケが分からずキョトンとしてるので
ここの桃太郎で、バンドのオーディションやってくれる事になった成り行きを説明すると
「おお、マジや!良かったな!頑張れよ!」
「ありがとうございます!マンドンさん」
その日はお祝いムードになり、遅い時間まで何軒も
そして何度も何度もカンパイループが繰り広げられた。
オーディション
翌日、僕はあわてて今井に連絡し
メンバーみんなにも事の成り行きを報告した。
キャバレー桃太郎でバンド出演を売り込んだら
一週間後にオーディションやるから来いと言われた事。
それを聞いてみんなも驚いた様子だった。
「マジや?!」
「マジシャンや?!」
「マジシャンプー&リンスのチャンリンシャンさ」
ハードルの低いジョークを飛ばしながらもメンバー全員、真顔になっていた。
そして、一週間後、
オーディション当日。
夕方17時に行われるオーディションへ行く前に、
横道坊主の4人は原楽器に集まる事になった。
原楽器のスタジオに入り
4人の音を確認し合うリハーサルを行った。
なんてったって
【長崎一のバンドです】と豪語したからには
ミスは許されない。
スタジオで何度も曲練習が繰り返された。
曲は
「フールフォーユー byルースターズ」
「どうしようもない恋の唄 by ルースターズ」
「グッドオールドロックンロール by キャロル」
「ハニーラブ by ブレインウォッシュバンド」
etc・・
♪初めて君を見つけてOh yeah〜
毎日思い焦がれて cryin’ day
まだ名前も知らないけれど woh woh
今日から僕の恋人〜♪
(ハニーラブ byブレインウォッシュバンド)
義人の声もバツグンにいい。
今井のギターも上手いし、いいメロディかき鳴らす。
正樹も【長崎一のチョッパーベース】だから安心。
僕もエイトビートを叩かせたら
長崎で3本の指に入るとは言わないが、
せめてゴホン・・
と言えば龍角散だ。
今井が名付けた「横道坊主」というバンド。
初めて音を出した時から
僕は本当に【長崎一のバンド】になるだろうと信じて疑わなかった。
何周か曲練習を繰り返し
あとは天に運をまかせ
鍛冶屋町通りから思案橋通りへ
まだ20歳そこそこのうら若き4人の横道坊主は
自称【長崎一のバンド】の看板を背負って(汗)
西日本最大のマンモスキャバレーニュー桃太郎へと向かって行った。
to be continued・・