これはオレの歌だ!
オレはこうしてBIGになった。
だれもがBIGになれるはずだ。
と帯に書かれたこの本。
この「成りあがり」を読んでからというもの
もうそれ以外は考えられないほど僕は強い影響を与えられていたのだろう。
「成りあがり」の内容をザックリ説明すると
矢沢永吉が生まれ育った広島にいる頃の貧乏な生い立ちの話から始まり、
やがて広島から単身東京へ向かい(途中の横浜で降りるのだが)、
バンドを作って苦労しながらも成功していくプロセスを描いた
サクセスストーリー本で
この本が汚れなき僕の純粋なハートを見事に撃ち抜いてくれたのだった。
血潮沸き立つ心のバイブルとして
何度も何度も読みまくり、アツくなった僕は
矢沢のようにまず「バンドで成功したい」との想いが、どんどん膨れあがっていった。
しだいに学校とか行ってて意味あるのか?と思うようにもなってしまっていた。
僕が通っていた長崎北高は
進学校であったため
BURNのメンバーも勉学を優先しだし
バンド活動も少なくなっていた。
ちょうどその頃に、ここにも「成りあがり」でアツくなっていた
Hという同級生の男と今度はよくツルむようになり、
二人して朝方まで夢を語り明かす事もザラになっていた。
そのうち
バンドで成功しようぜ!と
まさかの行動にうって出る事になる。
「成りあがり」疑似体験さながらに
まずは、いざ福岡へ向かおうという事になったのだ。
若き衝動は二人を無謀な行動に先走らせた。
僕ら二人は、福岡行きの
「九州号」という長距離バスに飛び乗っていた。
家出ともいえる行為に走ったのだ。
親や仲間もひどく心配するだろうに
そんな事はおかまいなしに
青い二人は夢と希望に満ち溢れていた。
福岡・・。
大都会だった。
長崎とは全く比べ物にならないほど建ち並ぶビルや繁華街の大きさに
思わず息を呑んだ。
とりあえず食うためにアルバイトニュース(フロムAみたいな雑誌)で探した中洲界隈の喫茶店で働く事にした。
が、
初めての社会体験に未熟な二人は戸惑うばかりで、
そこの喫茶店は1日で辞めてしまった。
だが夢に満ち溢れてる二人は次に
電柱に貼られている<住み込み付土木作業員募集>の
張り紙を見つけ働くことにしたのだ。
スコップで穴を掘ったり、
一輪車で資材を運んだり
足場を組み立てたり
こうやって矢沢も苦労したんだ!
「魂のシャベルで金を掘り起こせ〜♪」
矢沢の歌を口ずさみ、汗水流してのハードな肉体労働さえも、
若き無謀な夢が二人を支えてくれた。
二人で銭湯の帰りの夜道を歩きながら、Hがいつものようにキャロルとか矢沢を歌い出す。
それに合わせて
ドーントドンドン ツツタツ ツツタツ♬
僕も口ドラムでリズムを刻んだ。
ボロは着てても心は錦!
不安とか恐れとかそういうものとは無縁だった。
青き無謀な二人は天下獲ったると信じて疑わなかった。
明日、現場終わったらギターとベース募集の張り紙を楽器屋に貼りに行こうやと
タコ部屋のくっさいせんべい布団に寝ながら夢を語り合った。
長崎から家出してきたともいえる二人の少年たちは・・
夢と希望に満ち溢れていた。
二人のサクセスストーリーはここから劇的に始まると思いこんでいた。
のだが・・
何日か後、親と警察に見つかることになった。
to be continued・・